衣服に様々な機能を備えたスマートウェアのプロダクトはファッションテックの領域でヘルスケアモニタリングやメディアインタフェースなどの形で提案されています。これらは身体に近く、衣服と一体化されていることから、継続的な身体情報のモニタリングや新規にデバイスを持ち運ばないで済むといった点で優れていますが、その機能を使うためには特定の衣服を身に着ける必要があるという課題も抱えています。
本プロジェクトではファッションとスマートウェアの未来を考えるにあたり、デザイナーやユーザーが自らの衣服をスマート化できる世界を目指しました。インタラクションデザインの専門家である慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科の山岡潤一先生のFuture Craft Labとの共同研究プロジェクトとして実施しました。
本プロジェクトでは、ファッションアイテムに用いられる様々な部品(ボタン、ジッパー、スパンコール等)をデバイスやスマートマテリアルによりIoTノードとし、それらを簡単に接続し機能をデザインできる開発環境をターゲットに据えて、用途に合わせたスマートウェアを個人やデザイナーが簡単にプロトタイプできる世界を目指しました。その第一歩として、市販のIoTデバイスの接続法や衣服に取り付け可能な小型センサノードの開発、それらを用いたワークショップの実施などを行いました。
スマートウェアの設計を特殊な専門知識なしに作成するために下の図のようなワークフローを考案しました。はじめにデザイナーは汎用的なイラストやCADツール上で配置したいIoTノードの種類と位置を選択します。続いて、IoTノードの配置データを元に、ソフトウェアは自動で配線を設計し、デジタルミシンによって衣服上に配線が設計されます。この配線の箇所に最後の接点だけ導電糸を縫い付けることで、意図した箇所にIoTノードが配置されます。
提案手法を用いて実際にスマートウェアのプロトタイプを作るWorkshopを実施しました。Workshopはコロナ禍ということもあり、Future Craftsのメンバーを参加者とし、4チームで実施しました。2時間半程度の時間でコンセプト創案から簡単なデモンストレ―ションまで行いました。
Workshopではチーム毎のユニークなアイディアが実際に動作するプロトタイプと共に紹介されました。実際に試作してみると、着心地や操作性などを体験できました。事後のアンケートでは、本手法では簡単に様々な機能を衣服上で組み合わせることができ、アイディアを高速で試すことができる点などが評価されていました。
本プロジェクトでの知見は今後のスマートウェア開発プロセスなどに活用していく予定です。本内容にご興味のある方は info-zozonext@zozo.com までご連絡ください。